ソフトスイッチングはDC/DCコンバータの小型軽量化、および高効率化のために重要な技術です。電圧共振、電流共振、部分共振の3種類がありますが、現在は部分共振が主流になっています。このセミナでは、部分共振の動作原理をわかりやすく説明します。絶縁型DC/DCコンバータでは、変圧器の励磁電流または漏れインダクタンスを利用して部分共振を実現します。変圧器の励磁電流には通常の電流とは異なるユニークな特徴があり、ソフトスイッチングの理解には励磁電流の振る舞いを正しく理解する必要があります。漏れインダクタンスはソフトスイッチングを実現するための重要な要素であると同時に、サージ電圧やスイッチング損失を発生させる「悪役」でもあります。このセミナでは第2章で、変圧器のインダクタンス成分がソフトスイッチングに与える影響を詳しく説明します。
ソフトスイッチングはハードスイッチングの欠点を克服するために開発されたので、ハードスイッチングはスイッチング損失の大きな古い回路方式、ソフトスイッチングは新しい優れた回路方式、というイメージがあるようです。しかし、ソフトスイッチングの回路方式でもサージ電圧やサージ電流が発生する場合もあり、逆にハードスイッチングの回路方式でもスイッチング損失がほとんど発生しない場合もあります。回路方式を選択するにあたっては、ハードスイッチング・ソフトスイッチングと2者択一的に考えるのではなく、各種回路方式のスイッチング時の現象を詳しく検討して比較する必要があります。本セミナでは第3章で、各種回路方式のスイッチング時の動作を「ソフトさ比較」という視点で比較検討します。回路方式の選択に役立つことを期待します。
■徹底理解シリーズについて
DC/DCコンバータは数Wから数100kWの容量まで広く実用化されています。使われる分野も家庭用から産業用まで広範囲に及んでいます。幅広い容量と様々な用途に対応して、たくさんの回路方式が研究され、実用化されてきました。それぞれの回路方式には固有の動作原理があり、独特の特性を持っています。DC/DCコンバータを使用する場合、特性をよく把握した上で回路方式を選択し、動作原理を完全に理解した上で設計する必要があります。
「DC/DCコンバータの徹底理解講座」では、DC/DCコンバータの重要な回路方式を次の8つのセミナーに分けて詳しく説明します:①フォワード型DC/DCコンバータ、②ブリッジ型DC/DCコンバータ、③電流型DC/DCコンバータと双方向DC/DCコンバータ、④PFCコンバータ、⑤ソフトスイッチング、⑥共振型DC/DCコンバータ、⑦LLCコンバータ、⑧DABコンバータ。それぞれのセミナーでは、各回路方式の基本となる動作原理をまず説明し、各種動作モードでの特有の振る舞いを解説します。その上で各回路方式の特徴を詳しく解説し、特性改善のための手法を紹介します。初心者の方は、各回路方式の動作原理と特徴の学習にご使用ください。ベテランの方は動作原理と特性の確認、および設計スキル向上のためにご参加ください。
■徹底理解シリーズと対象アプリケーション一覧
セミナー
アプリケーション
通常の1石フォワード型は、200W以下程度の電源一般に広く使用
アクティブクランプ方式1石フォワード型は、数kWも可能でプリウスに使用されていることで有名
数100W~数100kWの大きな容量の電源装置の定番の回路方式
太陽電池の昇圧、燃料電池の昇圧、双方向型の一部
電池の充放電、2つの電力系統の相互電力融通、モータの力行/回生制御
交流を受電する電気製品すべてに使用。家電、OA機器、充電器、産業設備、その他
ソフトスイッチング
DC/DCコンバータ高性能化のための重要技術。LLC、DAB、フォワード型、ブリッジ型などに適用
小型軽量・高効率・低ノイズ電源、MHz以上の高周波電源、非接触給電などに使用
小型軽量、高効率、低ノイズ電源、家電、OA機器、充電器などに広く使用
電池の充放電、直流バスラインシステム、直流配電システム、2つの電力系統の相互電力融通