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パワエレ研の大学教授と学生インタビュー(第3回) 中国清華大学

インタビュー実施日:2019年9月20日

 

清華大学信息科学技術学院自動化系 楊耕教授

電気学科 博士後期課程 史海旭さん

 

清華大学信息科学技術学院自動化系 楊耕教授

 

パワエレ研究・パワエレ教育の現状と課題

楊耕教授は清華大学の自動化系学科に所属しており、学部の教育委員会の責任者(指導方法に関する責任者)も勤めている。自動化系は中国の大学では一般的な学部であり、清華大学では製造自動化、パワエレ(主にパワエレ制御)、情報処理(AI、画像処理)、生物情報科学など、幅広い分野における研究を行っている。パワエレ分野は、1980年頃にサイリスタ電力変換器の研究および実用化(そのまま企業の研究部門へ移管)に始まり、現在はセンサレスモータ制御、アクティブフィルタ、DCマイクログリッドなどの研究を推進している。

自動化学系学科は、電気系学科と比べてより横断的な研究を強みとしている。楊耕教授は、研究、教育、学会活動における従事率1:1:1で日々の活動を行っている。教育をテーマとした若手研究者・指導者の会合なども毎年開催しており、学術界全体のレベルアップに貢献している。

 

―中国におけるパワエレ教育には、どのような課題があるのでしょうか?

 

楊先生 中国は国土が広く、地域によって人口密度や特性が大きく異なる。このため、各大学におけるパワエレ教育は、各地域に根ざしたパワエレ産業に貢献すべきであり、パワエレ教育の内容やカリキュラムにおいて各々の大学が特徴を持つべきと考えている。例えば、北京地区では国営を含む大手の電力供給企業やそのサプライヤーが数多く集まっており、パワエレの教育も電力系統、大電力を扱う変換器や電気機器に関するテーマが中心となっている。一方、深セン地区では情報機器向けの比較的小規模のコンバータやDCマイクログリッド、EV向けインバータなどのテーマが中心となっている。産学が近いこともあり、教育内容が地域産業と密接に関係している。

 

―中国と他国におけるパワエレ教育に相違はありますか?

 

楊先生 中国では2004年から政府方針により、GDPの4%を教育に投資することになった。特に地域産業を振興するため、各大学は優秀な人材を自分の都市に集めて教育し、地元企業に貢献してもらうという方針で教育を行っている。パワエレ関連の就職については、非常に売り手市場となっている。

 中国の教育省(日本の文科省)は、常に各大学の教育レベルを厳しくチェックし、ランク付けを行っている。このランクによって政府からもらえる予算や、優秀な学生が集まるかどうかが決まるので、各大学では設備や人材などのレベルアップに対し、常に手を緩めることができない。

 

-中国のパワエレ技術の国際競争力をどのように捉えていますか?

 

楊先生 今から10年前は、優秀な学生は欧米企業や日本企業に就職していたが、最近では中国企業のレベルがあがり、自国企業に就職する学生が増加している。また、技術進歩を早めるために国際交流の機会が増えており、中国からの国際会議への参加者数や中国から投稿される技術論文数もかなり多くなっている。

 

-研究室の学生に対する期待について、お聞かせください。

 

楊先生 学生には、リベラル・アーツを重要視してほしいと考えている。自分の学科の学生達は、理数系の学習のみを行っており、人文科学が弱い。このような課題を解決するため、例えば「世界国際政治学」という本を学生に読ませ、歴史的視点による国際社会の成り立ちを洞察させるなど、より高い視点で物事を考えられるよう指導している。

 

 

 

電気学科 博士後期過程 史海旭さん

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パワーエレクトロニクス研究室の学生に聞く

研究テーマと将来の夢。

 

-史さんは来年博士の学位を取得予定ですね。研究テーマを教えてください。

 

史さん DCマイクログリッドにおけるコンバータの最適化に関する研究、シミュレーションおよびミニモデルを使った実験検証などを行っています。具体的には、Unified ControlというDCネットワーク内のコンバータを統合的に制御し、負荷変動に対しても最適に制御できるシステムに関する研究です。

 

-パワエレ研究を選択した理由を教えてください。

 

史さん パワエレは再生可能エネルギーに代表される成長分野であり、やりがいのある研究分野だと感じました。電力系統よりもマイクログリッドの変換器の方がより複雑であり、今後まだまだ発展の可能性があると感じたため、現在の研究テーマにチェレンジしたいと思いました。

 

-研究室に入って、印象はどうでしたか?

 

史さん 研究室は、とても自由です。研究テーマも比較的自由に決めさせていただき、支援をいただいています。1名の教授に対して7名の大学院生しかいないという小規模な研究室に所属しています。

 

-就職に際にして、不安に感じていることはありますか?

 

史さん 就職については、安定性を重視しています。国家の研究機関などを希望しています。特に、親の面倒を見なければならないことが心配です。周囲を見ても、一人っ子政策で皆兄弟がいません。これまで自分の教育に多大な投資をしていただいたので、地元の安定企業に就職し、親の面倒をみたいという考えの学生が多いです。

楊先生 確かに保守的な学生は多いが、情報系ではITベンチャーに就職する、あるいは起業する学生も多い。パワエレ分野は幅広い知識が必要なので、すぐに起業することが難しいと感じている学生も多いのではないか。

 

-最近、興味があることは何ですか?

 

史さん 少なくとも月曜日から土曜日の朝9時から夜9時までの間は、研究または勉強をしています。それ以外の時間は、趣味のゲームを楽しんでいます。インターネットのRPGに熱中し、気分転換をはかっています。

 

-将来に対して、何か夢はありますか?

 

史さん 将来は、自分の研究によって開発した高効率の自立型電力変換器を、再生可能エネルギーのネットワークに導入し、普及させたいと考えています。そして、地球環境にも貢献したいです。

 

-ありがとうございました。

 

 

 

 

楊耕教授

清華大学 信息科学技術学院自動化系

工学博士、IEEEシニアメンバー

 

 

 

 

 

 

史海旭さん

清華大学 信息科学技術学院自動化系

博士後期課程

 

 

 

 

 

 

清華大学 楊耕教授と東京工業大学 赤木泰文特任教授/名誉教授(当協会の技術委員長)