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【パワエレ研の大学教授と学生インタビュー】(第1回)東京大学

パワエレ研の大学教授と学生インタビュー(第1回) 東京大学

東京大学大学院新領域創成科学研究科 堀洋一教授

堀・藤本研究室の布施空由さん、ウィーラセカラ・へランカさん

 

 

現在のパワエレ研究とパワエレ教育について

 

 パワエレをツールとした制御工学とその産業応用の研究に多くの実績を持ち、電気自動車やモーションコントロールの分野に大きな革新をもたらす東京大学大学院 新領域創成科学研究科教授 堀洋一先生に、その研究テーマとともに、パワエレ教育の動向や今後の課題などのお話しを伺った。

 

― 堀・藤本研究室の概要と研究テーマについて教えてください。

 

堀先生 当研究室は本郷の電気工学専攻に軸足をおきながら、平成20年から千葉県・柏キャンパスの先端エネルギー工学専攻に全面移転しました。同時に藤本博志准教授と研究室の一体運用を開始し、研究室には博士学生、修士学生、学部4年生、研究生ら優秀な人材が在籍・卒業しています。

 主な研究テーマは「電気自動車の制御」「ワイヤレス電力伝送システム」「人間親和型モーションコントロール」の3つで、2012年からは電気自動車で行ってきた研究を電気飛行機に適用する新たな取り組みも開始しています。

 

 

 

 

 

 

電気自動車における研究とは、具体的にどんなことですか?

 

堀先生 僕はこれからの自動車研究のキーワードは、モーター、キャパシタ、ワイヤレス、この3点と提唱しています。当初は100年後の車と言っていたのですが、最近はそんなに先のことでもないということになってきました。

 われわれはガソリンを車に入れていますが、ガソリンを電力換算にすると2万キロワットくらいですか。16両編成の新幹線をフルパワーで加速するくらいのエネルギーを車に入れていることになります。そんなことはそもそも電池では無理です。これからの車はエネルギー容量が大きなリチウムイオン電池ではなく、こまめに充放電を繰り返すことができるキャパシタを使うようになるでしょう。

 キャパシタは電池と比較してパワーが10倍、エネルギーは1/10。高電力密度で、急速充電が可能なうえ多数の充電回数に耐え、安全かつ環境にやさしいなど多くの利点があります。将来の電気自動車はキャパシタを使いながら、外部から頻繁に充電を繰り返すという方式になると考えています。

 当研究室では走りながら、あるいは信号や駐車場などで止っている最中に充電を行うワイヤレス給電の研究に力を入れています。実際に堀・藤本研究室と民間企業による共同開発で、走行中給電に対応したインホイールモーターを開発、道路からインホイールモーターへの走行中給電による実車走行に世界で初めて成功しました。リチウムイオン電池で走る電気自動車とはまったく違った未来のEVの理想形です。

 

国内におけるパワエレの動向は?

 

堀先生 僕が大学院生のころパワエレは新しい分野であり、大きな電力を制御するということに非常に大きな魅力があり、この道に進んだのですが、あっという間に成熟産業になりました。しかし、その後もパワーデバイスや制御手法が進化し、パワエレはまたおもしろい技術分野になっています。特に電気自動車への志向が高まってきたことで、効率や軽量化といった全く異なるパワエレのニーズが高まり、モーターが大きく変わってきました。

 

― 国内と海外のパワエレ教育に違いはありますか?

 

堀先生 パワエレに関してはアメリカもヨーロッパも非常に研究が盛んで、ずっと研究が続けられています。発展途上国では短期間で有名になりたいという若者が多いので、そのきっかけ作りとしてパワエレをやるという人も多いようです。日本の若者には、もっと頑張れよと言いたいですね。

 中国などのパワエレ教育を見ていると、基礎をはじめに教えているようです。日本の場合はオリジナリティを重視する教育をするので、優れた人材が出てくるけれど、まったくパワエレがわからず脱落していく人もいます。「基礎教育をきちんとやる」という面が日本の大学では弱いかもしれません。

 

研究室の学生への期待は?

 

堀先生 うちの研究室の学生は優秀で、情熱もあり、いいやつが多いですよ。さまざまな賞をもらっている生徒もたくさんおり、ドクターの成績上位者はほとんどが堀・藤本研究室でした。今年は15人くらいの優秀な学生が卒業しました。

 研究室には、毎年10人くらいのマスターと、510人のドクター、学部生も4人くらい入ってきます。僕が彼らにいつも言っていることは「君らは競争に勝ち抜いて、ここに来ている。奨学金ももらっている。だから成果をあげる義務がある。ついてこられずに、卒業できなかった仲間のことも考えろ」と。

 

 

 

堀・藤本研究室の学生2人に聞いた

研究テーマと将来の夢

 

布施空由さんに伺います。

現在の研究テーマとなぜ、研究室に入ったかを教えてください。

 

布施さん 僕はモータースポーツが大好きで、そういう方向の研究をやりたくてこの研究室に入りました。今、研究していることは電気自動車の制御です。

 四輪独立駆動する車両を使い、各車輪の駆動やブレーキをいかに工夫するかによって、安全に快適に走らせることを目指しています。特にスポーツカーやレース車のような、タイヤの限界まで使うものを想定しています。速いスピードで安全に走るという技術は、一般車でも適用できることだと考え「モンスター田嶋」(タジマEV)さんらと共同研究しながら進めています。

 

自動車好きということが前提にあったと思いますが、堀・藤本研究室を選んだ理由は?

 

布施さん 実は僕が高専(東京都立産業技術高等専門学校)4年のときに、当時私の指導教員であり,堀・藤本研究室のOBでもある白石貴行先生(現在は鹿児島高専に着任中)がインターンシップがてら、この研究室にお邪魔してみないかと誘ってくれまして、それがこの研究室を知るきっかけになりました。次世代の車は絶対電気自動車の方に行くだろうし、その研究ということで興味を持ちました。

 ちょうどその頃、世界中のF1レースやスポーツカーが電動化の方向に進んでいましたし、フォーミュラE(化石燃料を使用しない電気自動車のフォーミュラカーによるレース)も始まりました。まだ電気自動車の開発に本格的に取り組んでいる人は、日本ではそれほどいないのではと思い、この世界をリードするのなら、今がチャンスだと思いました。

 

ウィーラセカラ・ヘランカさんに伺います。

現在の研究テーマを教えてください。

 

ヘランカさん 私は主に電気回路をテーマにしています。ワイヤレス給電システムで送電のばらつきがある場合、どうやって解決するかという研究です。具体的にはコイルとコンデンサーといった素子のばらつきを考慮し、思った通りの効率が出せる研究をしています。

 

へランカさんはスリランカ出身ですね。

日本を留学先に選んだ理由を教えてください。

 

ヘランカさん 奨学金をもらって、外国で大学に入学したいと考えていました。行き先は日本、韓国、中国、イギリスなどいろいろあったのですが、私の父がスリランカにある日本の会社で働いていたことがあり、家でもよく日本人のことを話してくれていたので親しみを持っていました。日本は技術も優れているので、日本の奨学金にチャレンジしました。

 

この研究室を選んだ理由は?

 

ヘランカさん 子供の頃より車に興味を持っていたので、この研究室に入りました。車の研究をするなら普通のガソリン車の研究をするより、未来の車である電気自動車のほうが役に立つだろうと思ってたからです。

 

  布施さんに伺います。

研究室のなかで人気のあるテーマに人が集中したりしませんか?

 

布施さん うちの研究室は配属が決まったら「4月に来ても、君の席はない」と言われています。早めに研究室に来て先輩や先生と交流するなど、積極的でやる気のある学生に選択権が移ります。自分も配属前から必死に努力しました。やる気のある学生はしっかりサポートしてもらえますが、そうでない人は置いていかれます。

 3月ごろに「積極的に、なるべく早いスタートを切りましょう」というような内容のメールが藤本先生から届いたのですが、あれがどれだけ重要なことだったのか、入ってからしみじみ感じますね。

 先生とは毎週面接があり、2ヶ月に1回の発表会があります。また、自分たちで「制御勉強会」「パワエレ勉強会」「回路製作勉強会」などの勉強会を開きます。入って23カ月で降圧チョッパーを作って、先輩が点数をつけるというイベントも。学生主導で皆が必死に勉強していて、すごく厳しいので脱落者も多いです。

 8大学10研究室、約200人が参加するパワエレ合宿などにも参加します。そういうのもあって、制御をはじめパワエレの基礎、デバイスのことは勉強できる仕組みがうまくできていると思います。

 

 

ヘランカさんに伺います。

留学生であるがゆえに苦労していることや今後の進路について教えてください。

 

ヘランカさん 私は文部科学省の留学生として日本に来て、高専(富山高等専門学校)の3年生に編入してその後、大学3年生に編入しました。都会では奨学金だけでは不十分なので、今はバイトもしています。朝の69時はコンビニで働いて、それから研究室に来て、研究をやるというふうにしています。学会の前などは1週間で6時間しか眠れなかったこともあります。

博士課程からは奨学金が受けられないので経済的に厳しいものがあり、修士課程が終わったら、一度就職して、その後に博士課程に戻ろうと考えています。ただ、今後日本で博士を取るか、ヨーロッパの大学も経験したいのでそのチャンスを残すか、今考えているところです。

 

 

布施さんに伺います。

就職先はどのように考えていますか

 

布施さん モータースポーツが盛んなイギリスやドイツの自動車関連の会社を視野に入れています。まず海外で経験を積んでみたいと。レーシングカーを、自分がとりまとめて作りたいという夢があるので、部品メーカーではなく、どちらかといえば完成車のメーカーですね。

 でも同時に最先端の研究もしたいと思うので、制御関連の会社で働く可能性もあります。そこらへんは模索中です。会社にいても自分の夢が達成されないと思ったら、自分で会社を立ち上げることもあるかもしれません。僕はどんどん新しいことに挑戦したいタイプなので。

 

就職にあたって、もっとも重視することはなんですか?

 

布施さん 入ってから何がやれるかということが重要です。そのために実際に就職したOBや学会・セミナーなどで知り合った人の話を聞くようにしています。僕はインターネットの情報より、face to faceで実際に会った人から聞いた言葉を信じるタイプなので。人と会うことはとても重要なことで、常にネットワークを広げようと努めています。

 

将来の夢を教えてください

 

布施さん レーシングカーを作りたいという夢のもう一段階上の夢として、自分で乗っていて本当に楽しい車を作りたいということがあります。

 昔の車(ガソリンエンジン)は大好きだけど、環境に良くなかったり、事故の恐れがあったりします。次世代の電気自動車なら、環境問題にもある程度対応でき、かつ自動運転や安全機能を付加すれば事故の恐れも少なくなります。僕はそこに自分なりのプラスαを付けて、乗っていて楽しい車を作りたいのです。自分で作った車で、好きなところを安全に気持ち良く走るというのが大きな夢です。

 

 

ヘランカさんに伺います。

就職に不安や希望はありますか。

 

ヘランカさん 今までは他の学生や先輩との交流が主でしたが、就職してからは、会社の人とどのように接すればいいのかわからず少し悩んでいます。

また、会社に入ったあと、電気関係と異なる部署にまわされるのではないか不安です。この場合、自らの提案で望む部署に配置された人が過去にいるかどうかを調べて、どうしたらよいのかのアドバイスを先輩などから受けるとともに、自分なりのアイデアを考えて、望む部署に配置換えしてもらえるように挑戦します。それでも、うまくいかず自分の気持ちをそこに置くことができなかったら、自分のやりたいことができる別の会社に行くと思います。

 

― 将来の夢を教えてください。

 

ヘランカさん 私には二つの大きな夢があります。一つは大学の先生になることです。電気のことが好きなので、電気の研究を続けて、スリランカでその教育に携わりたい。スリランカでは実験できる環境が少なく設備が揃っていません。そこを学生のためになんとかできないかと思っています。

 もう一つの夢は、スリランカで自動車の会社を作ること。スリランカには自動車メーカーが一つもないので、それができればいいですね。

 

 

それでは最後に堀先生、日本のパワエレ業界や今後についてご意見をお伺いいたします。

 

堀先生 日本のパワエレ技術は他国と比べても明らかに強いと思います。さらに自動車メーカーがパワエレに入ってくることで、状况は大きく変わりました。今やパワエレの主役は自動車メーカーといっても過言ではありません。これからもますますパワーエレクトロニクスは注目される分野だと考えています。

 

本日はどうもありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京大学大学院

新領域創成科学研究科教授

堀・藤本研究室

堀 洋一先生

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京大学大学院

新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻

堀・藤本研究室 博士課程1年

布施空由(ふせ ひろゆき)さん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京大学大学院

工学系研究科 電気系工学専攻

堀・藤本研究室 修士課程2年

ウィーラセカラ・ヘランカ(スリランカ出身)さん