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 ―――「インバータの系統連系技術」の受講で得られる知識を教えてください。
 まず、私は「系統連系インバータ」は今後ますます普及していくもの、していかなくてはいけないものだと思っています。この技術がさらに広がっていくことを願っています。このセミナーで得られる知識の第一は、パワーエレクトロニクスの学び方です。パワーエレクトロニクスという言葉が広がるようになったのは、1970年代に入ってからです。ウィリアム・ニューウェルというアメリカのエンジニアが学会で「電力技術」「電子技術」「制御技術」を融合した技術分野がパワーエレクトロニクスであると指摘しました。今では当たり前になっていますが、この当時はこれら3つの専門分野は互いに独立していて、それぞれの専門家が分担していましたので、非常に衝撃的な指摘でした。即ち,パワーエレクトロニクスの習得は簡単ではないということです。そこでお勧めしたいのが、この3つの分野のうちのどれか1つに自分の軸足を定めて徐々にやれる範囲を広げていくという学び方です。パワエレという広い世界の中で自分の立ち位置を自覚することが大切です。
 第二に、配電線や商用電力系統に関する知識を得ることができます。このセミナーでは、商用電力系統の性質について理解してもらいたいと思っています。電力系統は生きものであると昔から言われています。平常時に電圧変動、周波数変動がどの程度あるのか、異常時にはどうだったのかというデータを知っておく必要があります。電力系統側の知識が必須だろうと考えています。
 第三は、制御法です。太陽光発電用パワコンを例にしてセミナーではお話していますが、パワコンはDC/DCコンバータとインバータの両方で構成されています。したがって、両方の制御ができなくてはなりません。また、フルディジタルに使われるCプログラムの書き方についてもお話したいのですが、このセミナーでは時間の制約から行いません。系統連系インバータには、単独運転防止機能、及び瞬低発生時のFRT機能が要求されますが、その構成法と実際に行った製品の実験結果を紹介します。最後に、分散電源に関する法的な規制、及び専門用語についても解説します。
 ―――「インバータの系統連系技術」を理解することで、どのように業務に活用できますか。
 連系インバータの業務というと、設計、部品選定、製造、組み立て、試験、客先据付、調整といろいろなものがあります。
 まず第一に、系統連系インバータシステムの全体像を把握していただきたいと思います。自らの業務の位置付けが明確となり、自信を持って業務を遂行できるようになるのではないかと思います。
 第二に、商用電力系統の性質を知ることにより、設計時の不安が解消し、試験・調整の能率がアップするのではないかと考えています。
 第三に、系統連系インバータに特有の機能の実装法と実際の動作波形を示しますので、設計者の頭の中でイメージを作ることができるのではないかと考えています。
 ―――大島先生が設計に参画した製品、及び苦労話などをお聞かせください。
 電力会社でパワーエレクトロニクを含む蓄電システムの研究をしていたときには、川崎駅近くの変電所構内でナトリウムー硫黄電池システムを世界で最初に系統連系運転しました。1990年3月のことです。私はプロジェクトの責任者、電気主任技術者を務めました。皆様ご承知のようにナトリウム-硫黄電池システムは実用化し、市販されています。次に、モータなどの動力機器を含めて瞬低から守ることができる瞬低対策電源装置を開発、実用化しました。現在、TMEICという会社からMPCという商品名で、国内だけではなく海外でも売られています。この装置は私が発案し、製造メーカーに共同開発を提案して実現したものです。電力会社の営業担当を救いたくて考案したものの、装置ができた後の製品化までのプロセスで電力会社内の協力を得られず,苦労した覚えがあります。電源メーカーでは、系統連系インバータを用いた小水力発電用単独運転防止装置を開発し納入しました。通常の連系インバータの機能に加えて単独運転検出用の独自機能が必要でした。制御プログラムはCで,私が書きました。ある浄水場内の発電所に納入したときには、朝の決まった時間に動作して発電停止してしまうことがありました。結局、浄水場の大型ポンプが起動することによる配電線電圧変動が原因だったのですが、制御プログラムを書き直して対策しました。原因の発見に多少、時間がかかりました。最後に、パワーエレクトロニクスはノイズと切っても切れない関係にある訳ですが、ノイズ対策に関しては「ノイズ対策」のセミナーを開催していますので、そちらの受講もお勧めいたします。