―――「インバータ(中級)」の受講で得られる知識を教えてください。
インバータに係る広い技術や知識を紹介する内容です。インバータについての詳細は大学の「パワーエレクトロニクス」の授業でも細かく取り上げられることはありません。大学院でインバータに係る研究をしている人以外は、電気出身のエンジニアでも、インバータについてはあまり詳しくは知らないのではないかと思っています。
この講座で得られる知識は、一言で言うと「インバータの基本」です。インバータの基本という言葉ではよくわからないのですが、インバータの技術はアナログであり、ディジタルでもあります。扱う電気は強電ですが、弱電のような設計をします。さらにインバータとつながっているモータや太陽電池などの機器との対応が必要です。
そのような、広い範囲にわたるインバータに係る技術や知識についての基本が身に着くと思います。
―――「インバータ(中級)」理解することで、どのように業務に活用出来ますか。
インバータを扱ってゆくにあたっての理解です。インバータを設計する方ばかりでなく、制御のハードとして購入して利用するだけの方、品証の方など多くの方の業務に役立つと考えています。インバータを業務として扱い始めたというようなエンジニアには直接役に立つと思います。
この講座は、私が書いた「入門インバータ工学」という本がベースになっています。会社に勤務していた時に、新入社員やこれから業務に就く人に読んでもらうような適当な本がなく、ほとんど口頭で教えていたと思います。大学に移籍してから、会社の人が新人に「これを読んで、わからないところは聞いてください。」というように使える本があれば世の中の役に立つのではないか、と思い執筆しました。この本を書いているときには、会社時代の部下や新入社員を頭に浮かべて、想定読者として書きました。
ですから、インバータを扱うための基礎体力と筋力のアップになると思っています。
―――「森本先生」が設計に参画した製品と設計の苦労話をお聞かせください。
会社時代にインバータ の内製を行いました。それまでは他社から購入していました。御多分に漏れず、購入品をコピーすることから始めました。その時、かなり上の人から言われたのは、「真似をするなら、良い所取りせずに悪いところも再現できるようにしなさい。」ということでした。
当時の上層部は、日本が海外のライセンスを使って製品を製造している時代を過ごした方々です。追いつけ、追い越せの技術の時代に担当だった方々だと思いますので、そんな言葉が出たのでしょう。おかげさまで、なんとかインバータを内製することができました。そのインバータを載せたエアコンは我が家に据え付けて運転していました。正直に言うと、いつパワトラが飛ぶかわからないので、こっそり自宅にパワトラを準備していたのですが、交換用のパワトラの出番がなかったのが幸いなことでした。